山車彫刻にみる聖獣  
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山車彫刻にみる聖獣

第4回 「山車彫刻にみる聖獣」

「山車彫刻にみる聖獣」
■架空動物の聖獣たち
■麒 麟
■鳳 凰
■亀
■龍
■獅 子

 知多の山車の特徴は、巧妙に演技するからくり人形と豪壮な曳き回し、それに絢爛豪華に施された装飾彫刻にある。
 この山車彫刻を身近にじっくり観察すると、様々な種類の花鳥草獣が詳細に刻まれていることに改めて驚嘆する。
 古代建築が、神社建築として伊勢神宮にみられるように、本来は無装飾のものを美としてみていた。仏教の伝来が日本建築の美的感覚を根本から変える。寺院建築に華美に色彩が施された豪壮な建物が好まれるようになる。山車彫刻に関していえば、これら仏閣建造物の蟇股や組物の貫や梁の先端に施した細部装飾の彫刻が、その源流といえよう。
 江戸時代に入って絢爛にして華美な日光東照宮の大造営が、これまでの建築様式美を一変さした。建造物の所狭しと、彫刻や絵や意匠模様で覆いつくされている。その図柄もインド、中国から伝来した聖獣から、ごく身近にみられる動植物が何万頭といる。題材も、たんにめでたい奇瑞なものから、儒教の影響から廿四孝、七賢人、仙人さらに民間信仰の七福神、十二支、処世訓物語まで種々雑多である。このことは、そっくり山車彫刻の題材に踏襲されていったのである。
 山車彫刻の題材を知るには、まず日光東照宮を訪ねてみればよい。素木と彩色されたかの違いはあるが、私たちが知る山車彫刻がそこにそっくりある。呆れるほどの数の花鳥草獣が躍動しているのに圧倒されてしまう。 △上へ

■架空動物の聖獣たち 

 これらの装飾彫刻の主役は奇瑞をもたらし、聖なる地を守護する聖獣といわれる竜や鳳凰など架空の動物である。今回はこの聖獣について述べてみたい。
 宮殿や神社、寺院、霊廟などの前に動物の像が置かれているのを眼にしたことがあろう。神社でいえば狛犬がそれである。これらを聖獣とか霊獣という。実在の動物を幾つか合体した想像上の架空動物で、聖なる地を守る守護神でもある。
 この聖獣は世界各地に存在し、いくつか共通したものがある。
 中国では麒麟、鳳凰、亀、龍の四霊はじめ、多くの聖獣がみられる。インドネシアの国章となった神鳥ガルダーは日本の伎楽面「迦楼羅」として知られる。インドから東西に広く伝播された一角獣、イランの犬の頭を持つ霊鳥シームルグ、メソポタミアの守護獣ムシュフシュ、獅子と鷲が合体したグリフィンはインドからイタリア半島までみられる。ピラミッドの守護獣スフィンクスはエジプトはじめ地中海沿岸のギリシアから西アジアにかけて伝わる。またギリシア神話で有名な翼をもったペガサス(天馬)も聖獣のひとつである。
 このように世界各地に聖獣は存在するのであるが、私たちの街中を歩いてみても聖獣を知らずに使用している場合が多い。例えば門扉の把手が獅子を装飾したものであるのはその家を守護するという本来の意味が込められているのだ。ただたんに恰好が良いからそれがあるのではない。山車彫刻においても聖獣の数は多い。日光東照宮は龍が主役であるという人がいるように、山車彫刻も本来は、これらの吉祥をもたらし聖なるものを守護する聖獣がある意味で主役であったのであろう。五穀豊饒を願い、そのための雨乞いの祈りから祭りが起こった。聖獣である龍が山車に多く見られるのはそのためである。長年祭りが伝承されていくうちに、形式だけが受け継がれ、本来の祭りの意味、庶民の切実なる願いが忘れられ華美になる傾向が残念でならない。 △上へ

 
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